フィンランド その1  物価の高さに身構え、日本の存在感に驚く

フィンランドやスウェーデン、デンマーク、ノルウェーも含めた北欧の4か国に対して個人的に抱いているイメージは、物価が高い、街や暮らしが洗練されている、福祉が厚い、英語が通じやすい、デザイン性が高い、といったところ。チームシマは今回のフィンランドを皮切りに、この先、それらの国々をすべて回ることになるのだが、実際、各国を訪れてみると、フィンランドに感じる雰囲気は他の3か国と違っていた。

北欧でありながら旧ソ連という社会主義の大国と隣り合っていた緊張もあったからか、軍事施設の存在が気になるときがあった。

そして、悪い意味で驚かされたのが、街中のごみの多さ。ロシアがあまりにもきれいすぎて、落差が激しかったのかもしれない。緑の映えるきれいな公園にポイ捨てごみが目に付く光景は、残念としかいいようがなかった。

フィンランドの特徴がもうひとつ。日本の存在感の強さだ。旅をしていると、世界中のありとあらゆるところに進出している中国や中国人の存在を嫌というほど意識させられてしまうが、ここフィンランドではどういうわけか、日本ばかりが目立っていた。

ヘルシンキの街中には寿司屋が多く、焼肉店も見かけた。焼肉店でも看板に書いてあるのはハングルではなく、日本語のみ。さほど規模が大きくない首都なのに日本語を使った店が異様に目立ち、それだけを取り上げるだけでギャラリーができてしまいそうなほど。外国で変な日本語を見るのが大好きな僕を、ひどく喜ばせてくれた。

日本でも存在感を示しているマリメッコのお店を訪れると、日本人観光客の姿が目についた。まあ、僕たちも日本人なわけだが。

マリメッコのイスでくつろぐゆっきー。まるで日本にいるかのような感覚に陥った。

他に北欧で、ここまで日本をお得意様にしている国はないだろう。どういう部分からここまで友好が根づいていったのか、興味深い。

さて、ロシアのサンクトペテルブルグから高速列車「アレグロ」に乗って18日ぶりの国境越え。EU圏のイミグレーションは何年かぶりで、印象に残らないほどあっさりしたものだった。

と思ったら、フィンランドに入ったすぐの「Vainikkala」という駅で列車の運行が打ち切られ、そこから先はバスで移動することに。

そういえば、チケットを取った際に何か赤字で注意書きが出ていたなあ、と思っていたら、このことだったようで、どこかでまた列車に乗り換えるのかと思っていたら、そのままヘルシンキまで行ってしまった。

歩いて宿まで行く。宿泊先は、夏期のみ旅行者に開放している学校の寮のようなところで、フィンランドにしては格安で泊まれた。とはいっても1泊50ユーロ(約6500円)は下らず、ロシアとの落差がかなり激しかった。

寮だけあって部屋にバス、トイレ、キッチン付き。デザインに狙ったようなところはなく、過ごしやすさ重視という造りで、実際に快適だった。

別のホテルに宿を取った友達と合流、デパ地下のようなお店で総菜を買って、そこらにあった公園で晩ご飯。着いた当初は物価の高さに躊躇して、レストランなどに入る気にはなれなかった。

緑豊かで、そこかしこにグループでご飯を食べている人たちがいた。

近くにあった道路標識をまねて遊ぶゆっきー。

ヘルシンキの市街を散歩。ロシアでも見かけた「FAZER」のお店は、チョコレートの包み紙までおしゃれだった。「GEISHA」という名のチョコレート菓子もあり、こんなところにも日本を感じた。

引き続き歩いていると、広場に続く階段に聖堂、晴れ渡った空と、まばゆい光景が飛び込んできた。

ヘルシンキの駅で気になった看板とともに、チームシマで記念撮影。

この「SIMA」は、蜂蜜や柑橘類入りのアルコール飲料で、5月1日のメーデーの辺りしか飲めないという期間限定もの。すでにシーズンは過ぎていたが、ヘルシンキ駅のこの店だけはなぜか取り扱っていて、後日、チームシマで改めて飲んできた。味はまあまあ。

翌日は、フィンランドに移住したゆっきーたちの友達を訪ねて、電車で片道2時間ほどかけてトゥルクへ。

フィンランドの鉄道会社「VR」のロゴはどう見てもJR東日本にそっくり。車内にはビーバーの絵もあって、ゆっきーが喜んでいた。

トゥルクやその近郊に数時間ほど滞在。

トゥルクは、ちょっとのんびりした雰囲気のヘルシンキをさらに輪をかけてのんびりさせたような街で、巨大なモニュメントが街とは不釣り合いに存在していた。そして、この街にはふさわしくなさそうな、一般人は立ち入り禁止の軍事エリアも居住地区のすぐそばにあった。

翌日は丸1日ヘルシンキでゆっくりして、さらに翌日は地下鉄に乗ってマリメッコのファクトリーストアへ。僕はあまり関心がなくて、役に立ちそうな旅グッズが安く買えたらいいなというくらいにしか考えていなかったものの、ゆっきーと友達は楽しみにしていたようだ。

衝撃的だったのは地下鉄の改札で、切符を買っていようがいまいが、誰もがフリーパス!

ただし、検札の係員が巡回していて、求められたときに正しい切符がなければ高額の罰金を払わなければならない。地下鉄の運賃も決して安くはなく、見つからないなら……とつい安易な方向に流されてしまいそうになる。

日本だったらまず有り得ない環境だが、この先、ヨーロッパで何度もこういう光景を目の当たりにして、なじんでいった。

ある駅にはこんなしゃれたエスカレーターもあった。さすがはデザインの国、フィンランド。

マリメッコは日本で買うより安かったようだが、それでもロシアを回ってきた僕たちからすれば高め。マリメッコ柄の生地が沢山置いてあり、ゆっきーは丹念に見ていた。僕は別に感心したポイントがあった。店舗に併設された食堂だ。

食器、トレー、ナプキンまでマリメッコ。それでいて内装は飾り気がなく、気取らない雰囲気で居心地がよかった。料理もおいしかった。

続いて、ゆっきーのリクエストにより、とあるバーへ。

途中の狭苦しい坂道でもトラムは難なく入っていって、絵になっていた。こういうところ、街のデザインは実によくできている。そして、お店に到着。

なぜカウンターのお兄ちゃんがビーバーのぬいぐるみを持っているのか、といえば、実はここは「BEAVER BAR」。全世界のビーバーに関連するものを探していたゆっきーにとっては、モンゴルに続いて久しぶりの獲物だった。カウンターのお兄さんに、ゆっきー持参のビーバーのぬいぐるみ、その名も「はじめ」を持ってもらっての1枚。

売っているビールの銘柄は「THUNDER BEAVER」。ゆっきーも僕も注文、店のテラスで飲み干した。昼間から飲むビールは大体いつでもおいしい。空き瓶からラベルをはがして、後で旅のノートに貼った。

この日はもう1つ、出合いがあった。

フィンランドが誇る名物、シナモンロール。それまで特に気にしていなかったのに、ヘルシンキの著名なお店「アカデミア書店」に併設されたカフェでお茶したときに頼んだら、思いのほか味わい深くて、はまってしまった。甘さとシナモンの香りとパンのもっちりさがちょうどいい塩梅だった。

ちなみにこの書店、フィンランドを代表する建築家アアルトの設計で、シナモンロールを食べた店の名も「カフェ・アアルト」。テーブルやいす、ライトもアアルトがデザインしたらしく、映画「かもめ食堂」のロケにも使われたことで知られる。天井が低い割に、店内は軽い雰囲気だったのが印象的だった。

この先、チームシマと友達の3人でしばらく、おいしいシナモンロールを探していろんなところで買い求めていくことになる。

こまごまと観光しているうちに、フィンランドを去る日があっという間に迫っていた。