落ちたら死ぬ!ノルウェーのフィヨルドの壮観と初の外国レンタカー運転

かつて15年近く前、福井県に住んでいた時、全国の「酷道マニア」の中では有名な道路が同県と岐阜県を結んでいることを知った。それは国道157号で、峠越えのルートの中には、すれ違いが不可能な狭い道、見通しが悪くいくつも続くカーブ、ガードレールはなくハンドル操作を誤れば転落する断崖絶壁もあり、100番台の国道とは思えないほど過酷な道、つまりは「酷道」だった。

岐阜県側には「落ちたら死ぬ!!」と書かれた看板があることも知られていて、僕はそれを見たさに1度、福井県側から車で1人、峠越えを試みようとしたことがあった。しかし、道が進むにつれてただならぬ気配を感じて、あえなく引き返したことを覚えている。

ノルウェーのフィヨルドでは、そんな「落ちたら死ぬ」のが確実な自然に思う存分に触れられる。言葉よりも写真の方が多くを物語ってくれるスポットだ。日本なら間違いなく、景観や環境保護と引き換えに何らかの安全対策が講じられているだろうが、そこはさすが北欧、自然はそのままにして訪問者の大人の対応、言い換えれば自己責任に委ねる。個人的にはこうした在り方に好感を持つ。日本とノルウェーの間には、決して縮められない文化の差を感じる。

チームシマの2人は物価の高いノルウェーに長居するつもりはなく、2泊3日の行程でリーセフィヨルドにあるプレーケストーレンを訪れ、その後はデンマークまでフェリーで抜ける予定を立てていた。物価高だからなのかどうなのか、よくは分からないが、ノルウェーの国民食は冷凍ピザなのだそうだ。外食はあまりにも高すぎて敬遠されがちで、この国の外食産業はボロボロの状態だという。ここにも、日本とノルウェーの間で埋めようのない文化の差がある。

ハンガリー・ブダペストの空港から「Wizz Air」に乗り込んだ。3時間弱でスタバンゲルに到着。

空港そばのハーツ(Hearz)でレンタカーを借りた。左ハンドルのマニュアル車の予定だったのが、出てきたのはオートマチック車。しかも車種はトヨタのYaris(ヤリス)、日本でいうVitz(ヴィッツ)でハイブリッド車、これはうれしい誤算だった。左ハンドル車は日本でも乗っていた時があり、なじみはあった。それでも、初の外国での運転、右側通行、交差点はラウンドアバウト(環状交差点)ばかりということで僕の表情は硬め。

宿に向かう途中にあったIKEA(イケア)で休憩と食堂で軽めの食事、そして買い出し。運転に混乱はなく、駐車場にも難なく止めることができ、オートマだと無難にやっていけそうな思いになっていた。ちなみにヴィッツは2019年12月、フルモデルチェンジに合わせて日本でもヤリスに改名、世界標準の車名に統一されるそうだ。

日暮れ前に宿泊先のホテルに到着。外壁に派手さはありつつも、シックでデザインに凝っているようでもあり、また北欧にやってきたなという印象。

近くのショッピングモールまで歩いて行くと、毛糸屋が普通に入っていて、ここでもやはり北欧にやってきたことを実感。モール自体は金曜の夕方というのにまるで活気がなく、物価が高い国だからだろうか、と思いもした。

宿に戻り、モールの中に入っていたスーパーとイケアで買った食材で晩ご飯。プレーケストーレンに備えて早めに寝た。

翌日は少しゆっくり目の出発。ホテルをチェックアウトしてイケアに寄ってから数十分、車で走るとフェリー乗り場に到着。

プレーケストーレンまでは一応、陸続きではあるものの、道路が整備されておらず、もしあったとしてもかなり回り込む必要があるので、フェリーに乗る以外に選択肢はなかった。車ごとフェリーなんていつ以来か。

プレーケストーレンの最寄りの駐車場に到着。駐車場代は一律200ノルウェークローネ(約2,680円)でフェリー代の2倍近く、ここは東京都心かと言いたくなる料金。この地から歩いて3,800メートル、334メートルの高低差を上ると目的地にたどり着く。チームシマのマスコットキャラクター、ロバ太郎の平然とした顔が何とも愉快だった。

最初はこのような道。

20分ほど歩くと景色はガラリと変わった。

何となく富士山の登山道を思い出したりもした。

かなり歩き進んだところでチームシマの2人で撮影。

これはマスコットキャラクターのはじめをゆっきーが撮っているシーン。崖から落とそうとしているわけではない。

最終盤を歩いていると見えた岩のすき間。

プレーケストーレンは実に素晴らしい景色だった。

崖に近いところで360度カメラを振り回してみた。

まさに「落ちたら死ぬ」を地でいく場所。

プレーケストーレンの岩場でゆっきーに立ってもらった。ピンクの目立つジャケットを着ていて、遠目からでもそれと分かった。

これだけ遠く写すと、かろうじて判別できるかどうか。

雨脚が強くなった。

雨が止んだすきにチームシマで記念撮影。

来た道を戻りはじめた。こんなところを歩いてきたわけだ。

途中から晴れてきて虹が見えた。こんなにくっきりとした虹を見たのは久しぶりだったように思う。

雨で濡れた地面が太陽光で照り返されていた。

駐車場まで戻り、車に乗ってこの日の宿泊先へ。かなり外れにあり、道は舗装されているもののどんどん狭くなっていった。そこを先導するロバ太郎。

何とか日暮れ前ギリギリに到着。チェックインして、山小屋風の部屋で夕食をとった。川が近くにあり、せせらぎを聞きながら眠りについた。

翌日は早くもノルウェー最終日。宿泊先はどうやら元学校を使った施設のようで、テントを持参すればそれを張って泊まれるようだった。8月とはいえ夜は冷えるので、それなりの装備がないとかなり厳しいとは思う。

少し散歩をすると、自然にあふれていて、こんなところによく学校があったものだと感心。

チェックアウトして車でさらに奥まで向かい、前日とは違うフェリー乗り場に到着。場末感が漂い、ここにフェリーが来るのかなと思っていたら、無事にやってきて一安心した。

目的地に着き、昼はパン屋でパンを買って食べることに。しかしここも高価で、どこから見ても凝っているとは思えないチョコパンやマフィン計3個と持ち帰りのコーヒー1杯で会計は143クローネ(約1,900円)。あきれるしかなかった。

スタバンゲル港からフェリーに乗り、1晩かけてデンマークの北の玄関口、ヒアツハルスに向かう計画で、郊外にある港に向かった。だだっ広さだけが印象に残った。ここにゆっきーを置き、空港でレンタカーを返して、ローカルバスで港まで戻ってきた。

出発まで時間を持て余し気味だったものの、大型フェリーが現れて程なく乗船。20時に出発した。ポカーンとフェリーを眺めるロバ太郎。

快適に寝られるようにと、狭いながらも個室を取っていた。

物価が高い中、レンタカーの運転やフィヨルド探訪などミッションが多かったノルウェーを無事にクリアできて安心の僕と、満足げな様子も見えるゆっきー。

余った現地通貨で食べられるものはあるだろうか、と思っていたら、救世主がいた。50クローネ(約670円)のポテト。群を抜いて安かった。ノルウェーで外食産業がてんで流行らないであろうことは、最後まで実感を持って味わえた。ノルウェー南西部の海を南から東へぐるりと回り、翌朝にはデンマークの北の先っちょに着く。もう少しのんびり船旅してもいいような気分だった。