アイスランドの旅も5日目に入り、いよいよ終盤。これまでに自然を満喫し、オーロラまで見た僕たちチームシマは、気分を新たに首都レイキャビクに向かった。もともとこの国のハイライトとして想定していた、温泉施設のブルーラグーンが待っていた。
アイスランド全体の行程はこちら。
前日泊まったクヴォルスヴォールルからレイキャビクまでは100キロ余りの距離で、朝は前日から続いて晴れていて快適な道のり。道中、少し寄り道してゆっきーが行きたがっていた毛糸屋さんにも寄ってみたものの、閉まっていた。
午前中にはレイキャビク市内に到着し、スーパーに寄ってみた。以前に紹介したスーパー「BONUS」以外にも、アイスランドにはなぜか奇抜な外観をしたスーパーが多い。なぜスーパーだけが突出してヘンなのか…?と思いながら外壁を眺めると。
右のほうに「TOKYO」の文字が。寿司屋だろうか。が然、興味がわいてきて、急ぐ必要はなかったものの、店内へと急いだ。すると。
持ち帰りの寿司のコーナーがあっただけ。がっかりしながら商品を確認してみた。下方に写っているサーモンの握り・巻きのセットで1,400円ほどと、日本の平均的な価値観で見るとかなりお高め。スーパーを後にして、この日のメイン、ブルーラグーンの訪問を前に、市内を少し観光した。
街を歩いていると、ひときわ目を引くハットルグリムス教会。高さ73メートルながら、高層の建物が少ないここレイキャビクでは遠くからでも確認でき、首都のランドマークとなっている。外観はアニメやゲームにも出てきそうな雰囲気だった。
中に入ってみると、石造りが際立つ荘厳な様子だったが、観光客の多さが雰囲気を和らげていた。
そしていよいよ、ブルーラグーンへ。
時間指定の予約制となっており、チームシマは14時過ぎに訪問。まずは出入り口の前で記念撮影。ケフラビーク国際空港にも近く、アイスランド滞在最終日に訪れてもよかったのだが、それだと後ろの時間を気にしないといけなかったので、最終日の前日に予約していた。
目隠ししたロバ太郎とともに写るゆっきー。ウィキペディアなどによると、ブルーラグーンは面積約5,000平方メートルで露天風呂としては世界最大で、1周するのに10数分ほどかかるという。地熱発電所の副産物として発生した温水にシリカが含まれており、池を形成するようになったのがブルーラグーンの発端だそうだ。
僕は露天風呂の底に埋もれているシリカと戯れてみた。
ブルーラグーンの定番、バケツに入っているシリカを顔に塗るシリカパックにも挑戦。目をむいて撮影し、直視に耐えない。ちなみに、僕の後ろにも「パックマン」の男性が2人写っていた。
アイスランドでもモデルとしてゆっきーに散々こき使われ、汚れが目立ってきていたロバ太郎も入浴。入場料にはドリンク1杯が含まれていて、チームシマで飲み物を楽しんだ。
風呂につからなかったごんばはじめは、ブルーラグーンから出てきた後に腕組み。「オラも入りたかったよ~」と怒っていそうな姿だった。ブルーラグーンの料金はいわゆるダイナミックプライシング、人気や予約状況による変動制で、チームシマでは2人で約2万円の出費になっており、ゆっきーは「信じられないほど高い入場料だけど?? 何時間でもいられる心地よさだった〜ここまで世界中のあらゆる人種の人が一緒に入るお風呂ってないよね〜」と感想。あと、「おきまりのシリカパックを2回もやる女子な島ちゃん」とも。
ブルーラグーンを楽しんだ後は、レイキャビクを通り越して首都から見ると北東方面にある毛糸屋へ。小さな女の子が出入り口から半身を出していて、絵になっていた。
店内には様々な種類の毛糸。さすがは毛糸の本場。
そこから、この国での最後の宿泊先「Ljósafossskóli – Hostel」へ。到着時にはすっかり暗くなっていた。前日の宿に続いて、元は学校施設だったらしい。
極北の国での最後の夜ということで、チームシマで乾杯。
この日もオーロラを期待したものの、二晩続いては見られず。
翌朝、明るくなってから部屋を撮影。元学校施設と言われれば、確かにそんなニオイがした。
車でレイキャビクへ向かったが、最終日はあいにく荒天。日本では僕は雪国での運転経歴もあり、特段ビビることもなかったが、このあと待ち受けている事態を暗示しているかのようだった。
この日は天気が変わりやすく、一瞬の晴れ間とともに大きな虹も。
最終日の最大の目的は毛糸屋めぐり。まず1軒目は、前日も見た店でゆっきーが毛糸を大人買い。
続いて2軒目。店構えがおしゃれ。
雰囲気のいい店内だったが、ここは見ただけ。3軒目に行く前に、レイキャビクの中心部に向かい、アイスランドでは最初で最後のレストランに寄った。
日本人によるレビューもある「Ostabúðin」という店。ランチは今日の魚料理、今日のスープ、ガチョウ肉のサラダなどといったメニューがあった。2人して頼んだ今日の魚料理はオーガニックな感じで、魚も新鮮で食べやすかった。
続いて、3軒目の毛糸屋。
このお店も、外観、店内ともしゃれていた。しかし、イギリスに持って帰れる荷物の量にも制約があり、ここも見ただけで終わった。
そろそろレンタカー店へ車を返す時間も近づいてきていたが、その前にレイキャビクなどに店がいくつかあるアイスクリーム店「Brynja」へ。しかし、アイスクリーム店にはおよそ似つかわしくない、壁のシュールな画風の絵画が気になって、味のことはあまり頭に残らなかった。
いろいろとあったアイスランド紀行もこれでおしまい。空港から少し離れたレンタカー店へと向かった。あとは車を返せば、ロンドンに戻るだけだった。しかし、ここでチームシマの旅史上、最大のピンチが発生してしまった。
車を返すと、なんと日本円でおよそ50万円の恐るべき請求がきた。僕たちが返したフィアット・パンダの状態をチェックしたところ、左のドアが壊れているので修理代を払え、というのだ。確かに、ドアの開閉時にギーコという音が鳴るようになってしまっていたが、開閉自体には問題なかった。しかも、初日に2万円以上かけてこの店が勧めてきた保険に入っていた。いざという時のための準備もしていたのに…。
僕は、店で入った保険で大丈夫だと聞いていたと反論。しかし、車を借りたときにも応対した、レンタカー店の感じの悪い女性は「保険には適用除外があり、その1つが強風によるドアの損傷だ」とまくし立ててきた。「そんなことは借りるときに一言も言っていなかった」と話しても、気が強そうなこの女性は「保険契約はそうなっている。払ってもらわなければならない」との1点張り。
しかし、ここで折れてしまっては、予期していなかった高額の支払いとなってしまう。50万円といえば、何か月分もの旅行費用だ。もし、支払わざるを得ないようなら、こんな不条理な旅なら、もうここまでにしてしまおう!イギリスに戻ったら帰り支度をはじめよう!すっかり気持ちがたかぶっていた。
車まで移動してドアの状態を再確認。泥だらけになった白いパンダの、ここの部分が問題だ、と示してくれた部分だけ指で拭かれたため白くなった。見た目には違いが何も分からなかった。
それにしても、ドア1枚の交換と営業できない期間の休業補償で50万円とは、いくら物価の高いアイスランドとはいえ高すぎる。ぼったくりではないか?ここで言いなりになったら、もう旅は終わりだ、このあとの飛行機を逃がしてしまったとしても、徹底抗戦するぞ――。
そうして思いを新たにしていると、形勢逆転のきっかけとなる助け舟が登場。エンジニアのようなおじさんがドアを開き、体重をかけてぐいっと下方に力をかけた。そしてドアを開閉すると、音がしなくなった!「これで大丈夫だよ」と声をかけてくれた。
それでも諦めないのが、店の感じの悪い女性。明らかにこちらの方の分がよくなってきていたが、この女性はあくまで自分の言い分が正しいものとして認めようとしなかった。
そこに、さらなる助け舟を出してくれたのが、そこそこ年配と思しき上司の女性だった。チームシマの粘りが響いたのか、交渉のテーブルにやってきて、感じの悪い女性とともに奥へといったん引き込んだ。そして戻ってくると、感じの悪い女性が「本来なら代金を請求するところだが、今回はもういい」と言い放ち、ようやく解放されることになった。この女性、仕事ができるのかどうかは知らないが、きっと職場では浮いた存在に違いない。それとも、僕たちに見せないような姿もあるんだろうか。少しばかり想像した。
晴れて“無罪放免”となったチームシマは、まだ興奮冷めやらぬ中、レンタカー店の車に乗ってケプラヴィーク国際空港へ。空港の中に設けられた募金箱を見て、このアイスランドではついに一度も現地通貨のアイスランド・クローナの現金を引き出すことなく、すべてカード決済で終えたことに思いをはせた。僕自身、これまで訪れたことのある国で、このような経験は一度もなかった。日本でも2018年秋のPaypayのサービス開始あたりを契機にようやくキャッスレスが本格化してきたものの、そういった点ではアイスランドは何歩も先をいっていて、利便性が高く、近未来的だったのかもしれない。
ただ、アイスランド・クローナの硬貨には、島国らしく海の生き物が描かれていて、ゆっきーが動物好きの甥っ子のために持って帰りたそうにしていたことが少し引っかかった。どうせすぐには帰国しないから、しばらく無駄になるものを持ちたくないという思いが僕にはあり、結局、一度もこの国の現金を手にすることはなかったのだが。
ケプラヴィーク国際空港の通路はがらんとしていて、行きのときとはまた全然違った印象を持った。最後の最後まで盛りだくさんだったアイスランドの旅も今度こそ、これでおしまい。行きも使った「Wizz Air」(ウィズ・エアー)でロンドン・ルートン空港に向かった。