スペイン その3 世界遺産の街・サラマンカでメランコリックな気分に

バスク地方の街、ベルガラでつかの間の交遊をしつつ、先を急ぐチームシマ。そこには、パリでの最後の投稿でも触れた、西欧にいられる期限が迫っている事情があった。

10月28日時点でスペインとポルトガルにいられるのはあと10日間。ただでさえ、秋の物悲しげな気配が漂っているところに、追い立てられている焦燥感も重なって、チームシマの旅は、どことなくメランコリックな雰囲気に覆われつつあった。

2か月ぶりの電車旅

今回は久しぶりの電車旅。旅の序盤のロシアやモンゴル、フィンランドでは、あれだけ鉄道に乗ったというのに、長距離の鉄道路線に乗るのは、スウェーデンからドイツまで移動した8月末以来、実に2か月ぶりだった。

今回のルートはこちら。バスク地方を離れ、旧市街が世界遺産にも登録されているサラマンカを経て、ポルトガル国境へと向かう道のり。

バスク地方の街ベルガラから、友達のイヴァンちゃんに車で送ってもらって、スペイン国鉄・レンフェ(Renfe)のスマラガ駅(Zumárraga)まで来た。日本では見かけないような印象の駅舎だった。

前日、前夜に飲み食いしすぎて、朝から眠気が漂っていた。

ちなみにレンフェは2015年のスペイン旅行で使い倒して、夜行列車のトレンホテル(Trenhotel)にも乗ったほどで、今回は乗車前からすでに懐かしかった。スペイン旅行から帰って間もなく神戸から東京に赴き、そこで3年間を過ごして、出会いがあって仕事を辞めて、またこうしてスペインに戻ってきて……と、ここ数年の目まぐるしい移り変わりにも思いを馳せた。

10時20分発の電車に乗って出発。スペインのサマータイムは10月の最終日曜の午前3時で終わることになっていて、つまりこの日の明け方にサマータイムは終了。1時間遅く時計を巻き戻した。とはいっても、時計代わりのスマートフォンは自動で時刻を調整してくれるので、僕がやることはなかったのだが。日本との時差は8時間。のんびりした風景が続く中、車窓から見える景色を写し取った。

こちらは、パレンシア(Palencia)という駅で電車を乗り換えて、さらにサラマンカへと向かう途中の車窓から。相変わらずの田舎風情だった。イヴァンちゃんのパートナー、コイキちゃんからいただいたパウンドケーキを食べながら、目的地のサラマンカを目指した。

こぢんまりした旧市街を散策

16時前にはサラマンカに到着。以前にこの街を訪れたことがあるゆっきーから、街の成り立ちがどういったものかを聞いても、かつてコナミが出したシューティングゲーム「沙羅曼蛇」(サラマンダ)に似た都市名だな、というくらいの思いしか持ち合わせていなかった。しかし、その認識は街を散策していくうちに、大きく改めることになった。

この日の宿、エコノミーホテルにチェックインして、かつてこの街を訪れたことのあるゆっきーの案内で旧市街めぐりに出発。早速、通りかかったカトリック教会の前でポーズを決めてみた。

スペインで最も美しい広場といわれるマヨール広場にほど近い、別の広場に立っていた銅像とロバ太郎のツーショットを撮るゆっきー。この銅像はやけに漫画チックで、場にそぐわないところが逆にゆっきーの関心をひいたもよう。

こちらはゴシック様式の新カテドラル(Catedral Nueva de Salamanca)。新カテドラルとはいっても、16~18世紀にかけて建てられたらしく、見た目のとおり立派な年代物。

学生の街サラマンカを象徴する、ヨーロッパで3番目に古いというサラマンカ大学の外観は、他の多くの歴史的建造物に紛れて意外と印象に残らなかった。

夕焼けに映えるサン・エステバン修道院。スペイン独自のバロック様式、チュゲリラ様式の傑作というのは知らなかったが、1618年完成とのことで、僕たちが訪れたのはちょうど築400年後。当時は日本でいえば江戸時代初期、大坂夏の陣で豊臣家が滅んでから3年後ということで、時代がしのばれる。

サラマンカのマクドナルドは、マヨール広場にほど近い旧市街にあった。ハンガリーの首都ブダペストには「世界一美しい」といわれるマクドナルドがあったが、ここサラマンカの店舗もかなり雰囲気がよさげだった。

しかし、晩ご飯はスペイン料理店へ。これまでまともに食べていなかったスペイン名物のパエリアを注文。おなかが減っていたこともあってしっかり食べきった。

宿に戻る前には、腹ごなしに散歩。マヨール広場を訪れた。美しくライトアップされていて、写真では表現できないほどのすばらしさ。サラマンカの街のいいところは、すべてが歩いていける距離で事足りる点で、神戸の中心市街地のコンパクトさにも通じるものがあると思った。

ついでに、チームシマの2人でも写真に収めた。サラマンカはきれいで明るくて、フォトジェニックな街だった。滞在期限さえなければ、何日か延泊してのんびりしたい思いに駆られたが、いずれまたの機会に。1度や2度来れたなら、また訪れるチャンスがあると思って。

帰り際、古本屋でなんと「キャンディキャンディ」のスペイン語版を発見。昼間の銅像に続いて、サラマンカの場違いも甚だしいもの・その2といった感じだったが、翻訳版とはいえ、この21世紀のご時世に、僕の物心がつく以前の漫画が売られていたことに軽い衝撃があった。日本では、著作権をめぐる訴訟問題の影響で長らく絶版が続いているキャンディキャンディが、日本から遠く離れたこの地で、スペイン語とはいえ読めること自体も驚くべき話だった。

ちなみに、この店には「らんま1/2」や日本のアニメ版「アルプスの少女ハイジ」を漫画にした本も置いてあった。

早くもポルトガルへ

翌日は、まだ夜が明けきる前からユーラシア大陸最後の国、ポルトガルに向けて移動。チェックアウトの前に少し散歩した。

目的はチュロス。店に向かう前に調べていたとおり、スペインにしてはめずらしく、朝7時台から開いていた。朝早くともあって、訪れるのは地元の人ばかりで、店内にはどこにもメニューが書いていなかったので少しビビった。

アツアツのチョコレートをチュロスにつけて朝ご飯の代わりに。チュロスは塩味がついていて、チョコは甘さ控えめでバランスがよかった。しかも、コーヒー2杯も頼んで合計で5.5ユーロと、スペインはおろかユーロ圏でも安く、その人気にロバ太郎も納得。

このチュロス店のそばにあった教会。キリスト教の施設にしてはめずらしく円形になっていて、目を引いた。

次の移動は長距離バスだったため、宿に帰ってチェックアウトしたあとは、バスターミナルまで歩いて向かった。

マイナス1度!? いくら秋が深まり寒さが深まってきたとはいえ、薬局の温度計は壊れているとしか思えず。

バスに乗ってポルトガルへ。滞在期限が迫っていたため、サラマンカからアクセスしやすいポルトガル第2の都市、ポルトには向かわず、8時間かけて首都リスボンを目指すことに。

出発から2時間半ほどバスに揺られていると、車窓から国境が見えた。スペイン側に向かう男性と、ポルトガル側を目指すおじさんの後ろ姿と。標識を除けば、ありふれた道の光景だった。しかし、人間が見えない線を引いて国境を設けている、ということを、嫌でも意識させられる光景にも見えていた。

旅の情報

今回の宿

ホスタル コンセホ (Hostal Concejo)
ツインルーム 1泊 30ユーロ(約3,900円) 素泊まり
設備:専用バスルーム Wi-Fiあり
予約方法:Hotels.com
行き方:レンフェのラ・アラメディージャ (La Alamedilla)駅から西に歩いて12分。
その他:安くて快適な宿だった。ちなみにサラマンカの旧市街に近いのは、ターミナル駅のサラマンカ駅ではなくて、西に1駅行ったラ・アラメディージャ駅。地球の歩き方の地図にはなぜか、この駅は載っていない。

訪れた食事処

Cafeteria Casino
注文品:パエリア2つ、ビール2本 28.4ユーロ(約3,700円)
行き方:マヨール広場から北に歩いて2分。
その他:カフェテリアというよりはレストランで、広々としていて居心地がよかった。

Churrería Chocaletería Chamorro
注文品:チュロス、チョコレート、コーヒー2杯 5.5ユーロ(約710円)
行き方:マヨール広場から北に歩いて7分。
その他:こぢんまりとした店内で、イートインスペースがあった。いずれのメニューもおいしく、朝早くから客が買い求めにきていた。