ピンチの陰に油断あり スロバキアで締め出しを食らう

チームシマの2人がチェコの次に目指したのはオーストリアの首都ウイーン。ここでは4泊5日滞在して、うち1日をスロバキアの首都ブラチスラバの日帰り旅行に充てる計画を立てた。

バスは昼下がりにウィーン郊外にあるバスターミナルへ到着。隣接するメトロ駅の券売機で公共交通1週間券を購入し、メトロ、トラムを乗り継いで宿まで向かった。この1週間券は、月曜日の午前0時から翌月曜日の午前9時まで乗り放題になるという変わり種の切符で、チームシマが到着したのは月曜だったため、滞在が5日間でもこの切符を買った方が得だった。

宿にチェックイン。通常は学生用ホテルで、夏のみホステルとして営業しているという。

トラムに乗ってベトナム料理店へ。車内にくつろぎやすいスペースがある車両だった。

最寄りの停留所を降りて歩いていくと、道端に体重計が。お金を払って体重を量る機械のようで、こういうものを見たのは初めてだった。果たして、誰が使うのだろうか。野ざらしになっていたけど計量に問題は生じないのだろうか。

疑問に思いながらも店に到着。店の前の歩行者用信号機が愛らしかった。

フォーはベルリンのベトナム料理店よりも高価で、味はそれなりにしっかりしていた。ウィーンの物価は安くなく、特に外食はベルリン並みかそれ以上だったように思う。

ここから少し離れたザッハトルテの発祥の店とされる「カフェ・ザッハー」へ。後日訪れるための下見だったが、入店待ちの列の中には何と、熱い口づけを交わしているカップルも。

街中では、本格的な楽器を使って演奏しているグループも見かけて、いかにも音楽の都というイメージにぴったりの初日を過ごした。

翌日は買い物が中心。安い水準でデータ量を購入でき、EU圏で使えるSIMカードがあったのでそれを手に入れ、先を見据えて虫よけ効果のあるトラベルシーツを買いにアウトドアショップまで行った。

無事に購入。これは宿で撮った写真で、右の絹製がゆっきー用、左のエジプト綿製が僕のもの。後々、役立った。

昼下がりのメトロの駅で、招き猫のシャツを着ている人を発見。

この日はウィーンのシンボル、旧市街にあるシュテファン大聖堂にも足を運んだ。とにかく規模が大きく、外見もさることながら、中の様子も荘厳だったのが印象的だった。

旧市街で見かけた日本料理の店。まずは「KYOTO」。弁当、ラーメン、うどんがメインで、黒板には英語のほか、日本語ではなく韓国語が書かれていた。プラハと同じく韓国語の需要が高いのだろうか。

こちらは「SHOYU RAMEN」。ただし、しょうゆラーメン1本で勝負しているわけではなさそう。

観光施設の「モーツアルトの家」も少し立ち寄ってみたら、この日2枚目の招き猫。絵の右側に書いてある文字は日本語には見えず、かなりめちゃくちゃ。

そしてこの日の夕食は日本料理店「日本橋」。「にほんばし」と読ませるので、大阪ではなく東京ゆかりと推測できた。

予約なしでも入店できて、ネギトロ巻き、牛丼、親子丼にビールと、現地に滞在している日本人のように味わった。

うれしさあまりにネギトロ巻きを囲むチームシマ。値は張ったものの、きちんとした料理が味わえた。

と、ここまでは順調にきていたのだが、翌日に事件が起きてしまった。

早めに起きて朝一番で「カフェ・ザッハー」へ。注文したのはもちろんザッハトルテ。

併設されている「ホテル・ザッハー」の刻印入り。甘いもの好きの僕にも甘さが際立つ感じがして、ゆっきーは甘すぎて気分が悪くなったとか。

このあと、予約していたバスでスロバキアの首都ブラチスラバへ向かうことに。僕はパスポートを持ってきていたのだが、EU圏(正確にはシェンゲン協定圏)の移動に慣れたゆっきーは、パスポートを宿に置いたままだった。カフェからバスターミナルに向かう途中、パスポートを持っているか確認して「持っていない」と分かったものの、宿まで戻る時間はなかったのでそのままターミナルへ。後で、宿に出る前に聞いておけばよかったと後悔することになる。

行きのバスは出発直前のタイミングで乗り込み、特に検査を受けることもなく乗車。

出発から1時間半もしないうちにブラチスラバ城が見えてきた。

バスから降車。帰りも同じバス会社を使って夕方、ウィーンに戻る予定だった。

ブラチスラバの市街はウィーンより小ぶりなものの、ユニークな路上アートが所々にあって楽しめた。

この標識は路上アートを知らせるもの。それは何かといえば。

マンホールおじさんの銅像。正式には「チュルミ像」というそう。存在を知っていても度肝を抜かれた。

旧市街の広場に面した建物には日本大使館もあって、目立っていた。

パンケーキの店で昼ご飯を食べた。チームシマのメンバー、ロバ太郎も映りこんでの撮影。ブラチスラバはウィーンに比べて格段に物価が安く、それだけを考えるならここを拠点にしたほうがよかったかもしれない。ただ、街の雰囲気からは長居しても退屈になりそうだった。

この日は暑く、ゆっきーがカフェで一休みしている間に僕が街を歩き回ることに。これはブラチスラバ城から見た「UFOの塔」と呼ばれる展望台。ドナウ川に架かる橋を利用している。

大通りに沿って城壁が続く光景が見られた。

ゆっきーと合流後、旧市街にあったモニュメントの姿を真似てみた。有名な劇団員をモチーフにしているそう。

少し歩いて「青の教会」にも足を運んだ。メルヘンチックな外観にしばらく見入っているうちに、帰りのバスの出発時刻が近づいてきた。

バスターミナルに向かう途中には、真ん中が膨らんだような形の建物も見かけた。ここまで奇抜なものは、ウィーンの市街地なら何らかの規制に引っかかって建てられなさそうな気がする。

バスターミナルに着き、時間通りにやってきた「REGIO JET」のバスに乗り込もうとしたところで、ゆっきーが車掌の女性に制止されてしまった。この会社では、パスポートなどの身分証明書がない限り、国境を越えるバスには乗車できないルールになっているというのだ。行きは僕たちが出発ギリギリのタイミングで来たので、別の車掌が甘いチェックで通してしまっていたようだった。

ゆっきーは、僕1人だけ先に帰るか、と提案してきた。動揺しているのか、そんなことをしたところで何の展望も開けないどころか、事態がややこしくなるだけだと思って、僕も乗車せずにバスを見送り、他社のウィーン行きバスを待つことにした。

子どものころ、悪さなり聞き分けのないことなりをして、母に家から閉め出されたことは時々あったけれど、成人になって車掌にバスから締め出されるとは。ゆっきーはこのとき、「このまま一生この国から出られなかったらどうしよう」と思ったらしい。幸い、次にやってきた「SLOVAK LINES」のバスはパスポートのチェックもなく、運賃を払うとあっさり乗ることができた。

そして無事、ウィーンへと戻ってこれた。後で調べると、REGIO JETはチェコに本社があるということで、ここでもゆっきーとチェコとの相性の悪さが出ていたようだった。