スペイン その2 秋雨のバスク地方で友達の温かみに触れる

スペイン北部のバルセロナからバスク州のサン・セバスチャンへと向かったチームシマ。2人ともバスク地方には訪れたことがなく、行ってみたいということで意見が一致していた。

そして、このバスク地方には、ゆっきーがかつて、東京の旅館で働いていたときに知り合ったスペイン人の友達が住んでいて、訪ねるつもりだった。

サン・セバスチャンでグルメ三昧

バスクといえば、日本にいたときから持っていたイメージは、食が豊かでおいしいということ。あと、政治的には独立運動が盛んなイメージもあった。

しかし、スペイン国内でのバスクの独立運動は2010年代には沈静化していて、逆に、バルセロナのあるカタルーニャ州で独立問題が持ち上がり、チームシマが訪れる前年の2017年、独立を問う住民投票が州政府と中央政府の激しい対立の中で行われるなどしていた。僕たちのバルセロナ滞在中、そんな空気は微塵も感じなかったのだが。

今回のルートはこちら。ちなみに、「バスク地方」というとフランス領の北バスクが含まれるのに対して、「バスク州」という場合はスペイン国内の1つの州だけを指す。スペイン領にあたる南バスクはバスク州とナバーラ州で構成され、バスク州は南バスクの面積の半分にも満たない。また、サン・セバスチャン(San Sebastián)はスペイン語での呼び方で、現地のバスク語では、この都市はドノスティア(Donostia)と呼ばれている。

さて、バスは朝9時30分ごろに出発し、サン・セバスチャンに着くころには夕方が近づいていた。カタルーニャ州からバスク州へと、スペイン北部を東から西のほうへと移るのは、スペイン全土からすると移動距離はそれほど長くないようにみえるものの、それでも7時間ほどかかっていた。

この日の宿は、ブッキングドットコムで予約した小規模のホテル「ペンシオン エアソ」(Penshion Easo)。9月下旬のパリあたりから宿の予約には、民泊をメインに宿を選ぶエアビーアンドビーを多用していたが、前回、バルセロナで嫌な思いをして、次はきちんとしたホテルを、と思ったのだった。しかし、悪い流れは続くもので、その思いが裏目に出ることに。

ひとまず、チェックインして暗くなる前に早速、街のほうに出かけた。

途中にあったラ・コンチャ海岸(Kontxa Hondartza)は、旧市街からも近い場所にあった。

見る方向によっては、湘南・江の島のあたりを思わせるような眺め。

海を見つめながら、はるか遠く日本を思い起こしたチームシマのメンバー、ロバ太郎。

しばらく海でたたずんだあとは、旧市街のタパスバーで腹ごしらえ。バルが集まる通りにいくつか有名店の情報を得ていて、店の前を通っていて、にぎわいが感じられた「Bar Sport」に入ることに。

店名のとおりのスポーツバーというわけではなく、席数もそこそこのれっきとしたタパスバー。小さく切ったバゲットなどのパンの上に具をのせた、ピンチョスと呼ばれるタパスを中心に、多くの種類がズラリとそろっていた。

カウンターで注文するスタイルで、立ったまま食べることもできれば、テーブル席に座ることもできた。

チームシマはテーブル席へ。料理ができあがるたびに「シマ!」と名字で呼び出されるのに最初、ビクッとしたが、やがておもしろくなった。左はイカのソテー・バジルとバルサミコソース、真ん中下はウニのクリームスープ、そして右はフォアグラソテー。おいしい料理の数々にロバ太郎もほおが緩みっぱなし。

このフォアグラソテーはピンチョスのスタイルで、粗塩のみで味付けされ、フォアグラの素材が活かされていて、何ともいえぬ絶品!僕はもちろんおかわりをいただいた。お酒に酔って赤ら顔のなかに、満面の笑み。ちなみに、フォアグラは2段重ね。ゆっきーいわく「うまい!なんてもんじゃない。思わず無言になる旨さ」。

この店に入ると、バルセロナのバルがよほど、ちんけで高価なものだったように思えてきた。大満足で会計を済ませ、宿へと戻った。

柔軟剤のにおいに耐えきれず

サン・セバスチャンでは2泊する予定だったが、先に触れたように、バルセロナに続いて宿をめぐる問題が起きた。あまりにも部屋の柔軟剤の香りがきつすぎて、化学物質過敏症気味のゆっきーが体調を一気に崩しそうな状態になっていた。部屋は清潔だったし、宿の雰囲気も宿周辺の落ち着き加減もよかったのだが、においばかりは工夫や努力ではどうにもならなかった。

日本でも、消費者庁など官公庁が2010年代からきつすぎる香りに対するマナー啓発を始めていて、埼玉県や北海道などの一部の自治体を中心に、柔軟剤や香水などに対する「香りのエチケット」の運動が広がりつつあるようだ。僕も近年は柔軟剤や合成洗剤などの香りに敏感になり、柔軟剤などの強烈な香りよりも、汗臭さの方がまだマシだと思うようになった。

経験上、チェーン系のホテルでは柔軟剤にも気を配っているのか、こうした強烈な香りに悩まされる機会が少なく、個人経営に近づくほど香りが気になるケースが増える気がする。柔軟剤の香りは、電車でその香りがついた座席に少しの間、座るだけでも移ってしまうほどの威力があり、電車に乗るたびにどうにかしてほしいと思う。

さて、チームシマは結局、宿を出るのを1日早めて、次の目的地の同じバスク州の街、ベルガラへと向かうことに。朝、早めに起きて宿のレセプションまで、2泊のところを1泊にしてくれるか交渉しにいったものの、「返金はできない」ということで、「15時過ぎくらいに次の行き先に向けて出発する」と話すと、「今日ならいつでも出ていってもらったらいい」ということだった。

そんなわけで、サン・セバスチャン2日目はちょっとした観光をしつつ、昼ご飯にタパスバーに寄ってから、バスでゆっきーの友達が住むベルガラに行くことにした。

前日に続いてタパスバーが集まる通りへとやってきて、Bar Sportと同じ並びにある、これも有名店の「Borda Berri」へ。ゆっきーは、宿では厳しい目に遭いながらも、新たなバスク料理を楽しみにしていた。

この店の2大名物、リゾーニというパスタを使ったリゾットと、牛ほほ肉の赤ワイン煮。十分においしかったものの、前日のタパスバーのインパクトが忘れられず。まあこんなものかな、という表情のロバ太郎。

というわけで、Bar Sportまではしご酒。店の人が名前を憶えてくれていて、「オラ!シマ!」と声をかけてくれた。この日もウニのクリームスープを注文し、いわしとパプリカのマリネを頼み……とまたもや食道楽。そして、最後の締めはこちら!

フォアグラソテー。改めてゆっきーいわく、「安いのに感動レベル、、美味しすぎて同じのを何度も食べるという、、そして翌日も同じ店に行って昼から飲むという、、」そんなバルだった。名残を惜しみながら、店を後にした。

サン・セバスチャンで食べたピンチョス、タパスの数々を1枚にまとめてみた。真ん中はスペイン生まれのワインの一種、サングリア。よく食べてよく飲んだ!またまたゆっきーいわく「ああ、シェンゲンの縛りがなければ1週間は滞在して食い倒れたいのに、、」ということで、これまで何度も書いてきたように、西欧の滞在期限が迫っていたのだった。

宿に戻りつつ散歩した。こちらは18世紀に建てられたサンタ・マリア・デル・コロ大聖堂(Koruko Andre Mariaren basilika)。

再び海岸へ。やはり雰囲気がどことなく日本と似ている気が……。この日は前日と違って晴れ間も見られた。

宿に戻り、チェックアウトしてバスターミナルへ。ターミナルに着く直前、川にかかるマリア・クリスティーナ橋の尖塔が、僕たちを見送ってくれるかのようだった。

ベルガラでの温かい歓迎

サン・セバスチャンからベルガラへは海岸沿いから山道に入り、バスで約1時間30分の道のり。途中の道路沿い、名も知れぬ街の建物群がおもしろかった。

ベルガラには夕方に到着。山間部にある人口約15,000人ほどの街らしいが、バスターミナルの近くの建物を見る限り、もっと人が住んでいそう。天気は残念ながら雨模様だった。

そうこうしているうちに、ゆっきーの友達のイヴァンちゃんが車で迎えに来てくれた。今晩はイヴァンちゃんの家に泊めてくれることになっていた。

イヴァンちゃんの家に着き、一緒に暮らしているパートナーのコイキちゃんと合流して4人で撮影。イヴァンちゃんは大の日本好きで、日本語を話すことができて、観光で日本を訪れた際にゆっきーと知り合ったという。ゆっきーにとっては10年ぶりの再会だった。故郷のベルガラでの研究者としての生活など、積もる話をしているうちに、あっという間に時間が過ぎていった。

この日は土曜で週末ということもあり、イヴァンちゃん、コイキちゃんが僕たちを飲みに誘ってくれた。イヴァンちゃんは幼なじみとの仲がずっと続いていて、毎週土曜には欠かさず集まって飲んでいるらしい。バスクでは、はしご酒の文化は「ポテオ」と呼ばれており、イヴァンちゃんによると、バルを4、5軒はしごしてからレストランで食事するという。

家から歩いていける距離にあるタパスバー「Kortazar Taberna」へ。サン・セバスチャンのお店とは比較にならないくらいの混雑で、圧倒された。

イヴァンちゃんと3人で記念撮影。後ろにコイキちゃんやその友達の姿も。昼にタパスバーで飲み食いして、夜もこの店に連れていってもらって、すでにお腹がいっぱい。

しかし、この場はまだ前哨戦に過ぎず、これも歩いていける距離にある2軒目のレストラン「Zumelaga Jatetxea」へ。

イヴァンちゃん、コイキちゃんの友達とテーブルを囲んだ。スタートから4か月が過ぎたチームシマの世界旅行で、ここまで多くの人たちと食卓を囲んだのは初めて。感謝感激!

ここでは数々のバスク料理を食べて、すでにお腹一杯ながらも一品ずつおいしさが伝わってきた。イヴァンちゃんいわく、「ここのほうがサン・セバスチャンのお店より安くておいしい!サン・セバスチャンは全般的に価格が高いよ」ということらしかった。それなら、バルセロナのお店はどうなるんだろうか。

この夜は飲み食いしすぎて、実は1軒目の段階でちょっとリバースしてしまっていたが、この2軒目でもデザートやコーヒーまでしっかり食べて、話して笑って、日付が変わるまで楽しい時間を過ごした。

帰り際、店の前で、みんなで記念撮影。

イヴァンちゃんの家の近くまで送ってくれる間も、談笑の時間は続いた。ベルガラに着いてから天気はずっと悪く、秋雨が降ったりやんだりで肌寒かったが、逆にそれがイヴァンちゃんやコイキちゃんをはじめ、この街に住む人たちの温かさとの対比になって、じんわりと心の中に入ってきて、とてもありがたい時間だった。

翌日は、バスク州から一気にスペイン中西部の都市、サラマンカに向かうため、朝から移動することに。イヴァンちゃんが日本語のTシャツを着て、さらにはビーバーのごんばはじめを持ってくれてサービスショット。

次は、僕たちとコイキちゃんで。

コイキちゃんは、10時過ぎから16時ごろまで6時間近く在来線に揺られ続ける予定のチームシマのために、パウンドケーキを焼いてくれていた。いろんなおもてなしに感謝しきりといった様子のロバ太郎。

イヴァンちゃんが、スペイン国鉄・レンフェ(Renfe)の最寄りのスマラガ駅(Zumárraga)まで車で送ってくれた。次に会えるのはいつどこでか分からないながら、再会を誓って別れた。

そしてこの日、10月28日はとうとう、チームシマのシェンゲン協定加盟国の滞在可能期間があと10日間に。西欧脱出にむけたカウントダウンが始まった。

はたして、残りの期間内にポルトガルにも立ち寄ったうえで、アフリカ大陸まで渡れるのか。改めて地図を見てみると、リスボンあたりまでは何とか見えているものの、その先がまったく読めなかった。

旅の情報

今回の宿

ペンシオン エアソ(Pension Easo)
ダブルルーム 2泊 117ユーロ(約15,100円) 素泊まり
設備:共用バスルーム Wi-Fiあり
予約方法:Booking.com
行き方:サン・セバスチャンの鉄道駅、バスターミナルから西に歩いて12分。
その他:柔軟剤のにおいが耐えられなかった宿として記憶に刻まれたものの、それ以外の設備面などは問題なかった。

訪れた食事処

Bar Sport
注文品:イカのソテー・バジルとバルサミコソース、ウニのクリームスープ、フォアグラソテー、いわしとパプリカのマリネ、サングリアなど 2回で計52.9ユーロ(約6,800円)
行き方:サン・セバスチャンの鉄道駅、バスターミナルから北に歩いて15分。旧市街の真ん中あたり。
その他:この街の人気店。日本人観光客も多く訪れているようで、レビューが多い。フォアグラソテーは絶品。もう1度食べたい。

Borda Berri
注文品:リゾーニ、牛ほほ肉の赤ワイン煮、ビール 計10.4ユーロ(約1,300円)
行き方:上のBar Sportから左に3軒目にある。
その他:この店のある一帯がタパス通りあるいはピンチョス通りとなっている中で、ここも人気店らしい。並んでいるタパスを取るのではなく、自分で注文するスタイルで、できたてを食べられるのが特色。

Kortazar Taberna
注文品:不明
行き方:ベルガラのバスターミナルから北東に10分。
その他:すべてごちそうになったので、何を注文したのか不明。老いも若きも集い、スペインバルの雰囲気を最も感じられた場所で、居心地もよかった。

Zumelaga Jatetxea
注文品:不明
行き方:ベルガラのバスターミナルから南東に8分。
その他:この店もすべてごちそうになったので、何を注文したのか不明。歴史のある店のようだった。バスク料理を堪能して、締めのバスクチーズケーキまでしっかり味わった。