モロッコ その8 トドラ、マラケシュと逆戻りして小休止

僕の誕生日をサハラ砂漠で迎えるため、1泊2日のキャンプツアーに参加した僕たちチームシマは、砂漠の入り口の町、ハシラビードを早々に去り、来たルートを逆戻りする行程に入った。

ツアーで出会った日本人姉妹の車に同乗させてもらって、その日のうちにトドラ渓谷へ。そして、翌日にはマラケシュに戻り、少し休んだ後で次なる目的地となる大西洋岸の港町、エッサウィラを目指すことにしていた。

旅人に生き方を学ぶ

モロッコに来てから最大級の衝撃はこの姉妹、その中でも特に姉の存在だった。生活の拠点は日本にはなく、今回は日本に住む妹と合流、モロッコでレンタカーを借りてこの国を回っていた。レンタカーの運転は姉が一手に担い、すでに長距離をドライブしていた。モロッコでは、幹線道路に限れば運転のしやすさはヨーロッパと比べて遜色がないとはいえ、その勇気には感じ入るものがあった。

さらに、レンタカーの中で、姉は外国で誰に頼ることもなく自分一人の力で暮らしていることや、以前にアフリカを旅行した際、何もないところで現地に身一つで置き去りにされ、時間をかけつつ何とか状況を打開して乗り切った、といったことを淡々と話していた。

簡単にいえば、妹はよくいそうなタイプに見えた一方で、姉のほうは、日本で過ごしていたときには出会ったことのないような種類の人だった。ゆっきーには、この姉が何に対しても心の抵抗がなく、今まで出会った人の中でも最も見た目と中身にギャップがある人と感じられたらしい。自分の枠をぶち壊されたくらいの衝撃があったとか。

それ以外にも、仕事や生き方などさまざまなテーマを話しながら、3時間ほど車を走らせているうちにトドラ渓谷へと到着。2人を渓谷へと案内した。

渓谷では、躍動感のある写真を撮ってみた。

ここから、トドラ渓谷の玄関口、ティネリールまで送ってもらい、姉妹とはお別れ。ゆっきーが翌月、日本に一時帰国するこのタイミングで出会ったのは、何かの思し召しがあってのことかもしれなかった。

ここから国営バスのCTMのオフィスまで歩き、翌日のマラケシュ行きのチケットを手に入れて、寒さに参っていたトドラ渓谷の日本人宿「アーモンド」を1泊で出ることが確定して一安心。バックパックの荷物を預けていたため、どうしても戻る必要があった。

アーモンドのオーナー、みちよさんがおすすめしていたジューススタンドで休憩した。

乗り合いバンに乗って宿へ。サハラ砂漠を挟んで8泊目の宿泊となったが、僕は風邪が悪化していて、それまでのような元気はなくなっていた。

風邪が体をむしばむ

翌朝、トドラ渓谷を出発。この朝焼け、このオアシスの光景も見納め。

CTMのバスに乗ってマラケシュへ。

アトラス山脈越えでは、遠くに冠雪した山が見えた。まだ11月なのに、道端には雪が残っているところもあった。僕たちがトドラ渓谷にとどまっていた間の寒さがしのばれた。

マラケシュに着くと、時刻は18時を回っていた。まずは、次の目的地となるエッサウィラ行きのチケットを予約するためにSupratours(スープラトゥール)のオフィスに行き、翌々日のバスチケットを購入。Supratoursはモロッコ国営鉄道ONCFと同系列の会社が経営していて、モロッコ国内ではCTMと人気を二分している長距離バス会社だ。しかし、僕たちはこれまで使ったことがなかった。

次の行き先へのルートを確保したあとは、この日の宿にチェックインしようとしたときに、ゆっきーのパスポートがないことに気づいた。

どうやら、バス車内にショルダーバッグを置き忘れてしまったらしい。シャウエンで昼ご飯を食べたときに続いて、モロッコで2度目。宿のオーナーに「このままではチェックインできないよ」と指摘され、言われるまでもなくバスターミナルまで取りに戻った。

ありがたいことに、今回も貴重品は出てきた。きちんと取っておいてくれていて、営業所の支配人室に保管されていた。悪運が強いといえばいいのかどうか。

ひと騒動の後は早速、晩ご飯へ。宿からも近いレストラン「Zeitoun Café」を訪れた。

このレストランからは、マラケシュの見どころの1つ、アグノウ門が見えた。室内のランプも店の雰囲気づくりに一役買っていて、ステータスの高さを示しているかのようだった。

そして、ここのタジンは非常においしく、ゆっきーからは「これまでのベストを更新した!」とうれしい感想が。僕は疲れが先立っていたものの、確かにその通りだと思った。

そして、宿に戻ってきて部屋でほっと一息。風邪をひいたままのこの1日は僕にとって、とても長かった。

最後のマラケシュは休息の日

今回の宿は、これまでにもフェズなどで泊まったことのあるモロッコの伝統的な「リヤド」と呼ばれる形式。

朝食付きで、早速ゆっきーとともにいただいた。

ただ、種類は多かったもののほとんどがパンという構成で、単調さが気になった。そして、僕の体調は前日よりはよくなっていたものの、完全復活とはいかず。この日は宿で今後のルートを練りつつ、昼過ぎから散歩に出かけた。

こちらは宿の外を出てすぐ。宿は細い路地の突き当たりにあり、防犯という点ではかなり優れていた。そして今回、昼ご飯に向かったところといえば。

前回のマラケシュ滞在に引き続き「Amal Women’s Training Center and Moroccan Restaurant」。ゆっきーは気に入った店には何度も行くのがいつものスタイルで、僕も体調がすぐれない中、見知らぬ店にチャレンジするよりは、安心して食べられるところに行きたかった。

というわけで、今回は前回頼んだモロッコ料理は避けて、カレーやエビパスタを注文。安定のおいしさだった。

チームシマのチームメイト、ロバ太郎はお店の看板ネコと、向いている方向まで同じの見事なツーショット。

この後は、前回はほとんど立ち寄らなかったマラケシュの新市街でウインドーショッピング。ビルケンシュトックのサンダルが気にかかった。旅では日本から持ってきていた無印良品のサンダルを使っていたものの、鼻緒の部分の作りがよくなくて履き心地が悪く、別のものがほしいと思っていた。

このサンダルは履きやすそうだと思ったものの、この店では正価販売で、モロッコの物価を考えると高かったこともあって、買うのは見送った。そして、いつかこのタイプのサンダルを買おう、と心に決めた。

ぶらぶらと街歩きをしていると、のどが渇いてきて、今度はメディナ(旧市街)で通りすがりのスイーツ店に入った。

アボカドジュースを2つ注文。そして、悲劇がゆっきーを襲った!

どうやら、ジュースの中に男性のものと思われる体毛が入っていたらしい。ゆっきーのこの顔がすべてを物語っていた。僕は、そんなこととはつゆ知らず、すっかり飲み干してしまった。

休息も兼ねたマラケシュでの1日はのんびりとするなかで過ぎていき、翌日にはエッサウィラに向けて出発。僕の体調も回復してきた。いつのまにか3週間にわたっていたモロッコの旅も、終わりに近づいてきていた。

旅の情報

今回の宿

Riad Belko
ダブルルーム 2泊 660ディルハム(約7,800円) 朝食付き
設備:専用バスルーム Wi-Fiあり
予約方法:Booking.com
行き方:Supratoursのバスターミナルからタクシーで南東に約5キロ、15分ほど。
その他:前回のマラケシュで泊まった宿に再び泊まりたかったものの、2泊では予約が取れなかったのでこの宿を選んだ。エアコン付きで、風邪ひきの身でも快適に過ごすことができた。その反面、ベッドが狭かった。旧市街からは歩ける距離で、新市街にも市内バスで割と簡単にアクセスできた。

訪れた食事処

Zeitoun café
注文品:野菜タジン、鶏肉レモンタジン、アボカドジュース、オレンジジュース 210ディルハム(約2,500円)
行き方:アグノウ門の東すぐ。
その他:上にも書いたが、タジンはとてもおいしかった。グーグルマップでの評価も高く、おすすめ。

Patisserie Annakhil
注文品:アボカドジュース2つ 24ディルハム(約290円)
行き方:フナ広場から東に歩いて5分。
その他:スイーツとジュースの両方を販売。イートインもできて人気店のようだが、ゆっきーにとっては思い出したくない店となった。

Amal Women’s Training Center and Moroccan Restaurant
注文品:カレー、エビパスタ、コーヒー、パンナコッタ 180ディルハム(約2,100円)
行き方:ONCFのマラケシュ駅から北に歩いて15分あまり。
その他:前回のマラケシュに続いて2度目の訪問。